「真の知識国家への道は、より強力な福祉国家と、サービス業分野での規制緩和を合わせることである。...(中略)...この組み合わせこそが、今後、日本の重荷となる人口の高齢化に対処できる唯一の方策であり、事実、日本に残された、唯一の実行可能な進路なのである」。
新書だが、良質な内容で、予想より読み応えがあった。この著者は、イギリスの『エコノミスト』の元編集長。日本にも滞在経験があり、『日はまた沈む』で日本のバブル崩壊を予言している。最近は鳩山首相にも会ったらしい。
ひとつひとつをみると、世界金融危機以降に既にあちこちで語られていることがほとんどで、特に目新しいものはない。しかし、近年の世界経済の変化を俯瞰し、バランスよく的確に説明している。
日本の経済の停滞については、デフレと非正規労働者増加による低賃金化の他に、GDPの7割を占めるサービス業の生産性改善がうまくいかなかったことを原因として指摘している。中国については、為替の自由化に踏み切らざるを得なくなることを確信し、そうなった場合に起きることについて説明している。また、金融危機の応急措置として各国政府がやったことは、民間の債務を公共の債務に付け替えたことなのであり、そのため今後増税などの対応が必要になることも示している。他にも、格差と資本主義の関係、銀行を中心とした金融システムの規制のあり方、人類が資本主義の枠組みの中で環境問題に対してどのように対応してゆくか、ということについても考察している。
日本及び世界経済の行方について考える上での重要なポイントを、一般向けに整理してコンパクトにまとめている。一読に値する。