興奮して読み終えました。
一私塾の経営者がよくまあ、ここまで丹念に調べ上げ、事実の列挙に終わらず、歴史的時間軸と組織的な広がりの両面から立体的に日本の教育を描きあげたものだと思います。日本の教育システムは誰もが直観的に変だと分かっているけれど、どこがどう変なのかを語れるのはせいぜい個々の現象レベルまでだと思います。この本は、みんながもっているその直観に、具体的な事実の裏付けと、詳細な地図を与えてくれるでしょう。
この本の魅力は、そのような資料性に尽きません。ハートがあるのです。よくある体制批判になっていない。体制側に対しても保護者や生徒に対しても、全編を通してあたたかな視線が貫かれている。これは見事としか言いようがありません。
私は保健室児童の先駆けで、中2で完全にドロップアウトした人間ですが、そういう者の目で読んでみても、「わかってくれてる、この人!」という感慨がわき起こってきます。この本は、そういう人たちにも読んでほしい、癒しの本でもあります。
さらに、この本の根底にある社会的な視線は、単に教育改革への指針に留まらない深みをもっていると思います。日本の医療、福祉、農、企業や省庁の仕組みを考える上でも、素晴らしい慧眼が光っています。その意味で、社会的なジャンルを超えておすすめしたい一冊だと思いました。