カラダを売らない女性を「こちら側」、
カラダを売る女性を「あちら側」としたとき、
今はそのハードルはかなり低く境界線は曖昧になった。
著者によれば、
「2000年辺りからだんだんと、そして2006年辺りから決定的に、
ハダカの仕事の社会的な評価とカラダを売る女性たちの意識が変貌している」
それは、
「おそらく社会全体で加速度的に進んでいる階層化が関係している。
一生懸命に働いても生活すらできない貧困層が登場したことによって、
女性の最後の手段を売ることは恥ずかしいことでもなんでもなく、
売れるものがあるのは才能、それを誰かが批判できるような社会状況ではなくなった」
と分析している。
「カラダを売ることはよほどの理由があるんだろうと勘ぐる人は多いが、男の勘ぐりと実態とは大きな乖離がある。
誰も止める者がなく、周囲に似た者が存在する環境では、楽で刺激的で欲が満たせる方向に流れていくのは普通である。
家族や恋人という防波堤がなければ、知らない男とのセックスもすぐに麻痺して慣れるものなのだ」
本書が優れているのは、
ときに取材対象者の自宅に訪問し、彼女たちの部屋や室内の物品から人間像を探り出し(鋭い観察眼と仮説)、
そして、生い立ちにまで遡り、「あちら側」に渡った今に至る、1人1人の半生を淡々と冷静かつ鋭敏に取材する姿勢と距離感である。
現在は、すぐ近くに貧困が待っている生きづらい世の中。
結果、あらゆる階層に、ハダカの仕事を経験した女たちが存在している。
「こちら側」の世界しか知らない人には信じがたいかもしれないが、
そんな人でさえも一度レールを外すといつ「あちら側」にいくかわからない、そんな危うく曖昧な時代なのである。
一方で、ハダカとセックスの価値は年々下落を続けていて、今では決意をしたからといっても買い手が付くとも限らない。
高く売れるのはほんの一握りである。
著者は言う。
「経済が深刻に縮小しているのはカラダを売る、売ろうとしている末端の女性たちの姿を眺めていると明らかである」
本書は今の時代を忠実に映す鏡である。
そして、鏡に映った自分は、はたして「こちら側」なのか「あちら側」なのか今日も女性は錯覚を覚えながら生きている。
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