根津ANCREあんくるは2006年夏、
その名のとおりこの地に錨(ancre)を降ろした。
雇われ、その対価を受け取るための仕事としてやっていた頃とは違い、
「商売をする」、「し続ける」ということはそのまま私たちの生活すべてになった。
だからこそ、「商い」は日々直面する現実であったし、
その中で何をもって充実といえるかは
ふとした時に考えることがもっとも多いテーマだった。
佐藤啓二氏(さいち代表取締役社長)はそんな想いにさりげなく、
しかし説得力をもって応えてくれる。
「商いは飽きない。やり始めた以上は、飽きないで一生懸命やってください」。
放熱を感じるほどの言葉だった。
お店の現場で一日一日を生きてる人間だけがもっているチカラだった。
それは、雇われ時代にめぐらした「想定」とはあまりにも違うリアルで沁みる経験だった。
その時だ。
自分が日々の売上げに一喜一憂し、景気の悪さをうらみつつ、
でも、それでもこれを始めたのだと思い直す、
そんな何かがほしかったんだなと気づいた。
本書は今日この一刻一刻の商いが
いつだってこの地に錨を降ろしたあの瞬間につながっている、
それを教えてくれたのだ。
本書はまた言う。
「うちに来た以上、絶対幸せになってもらわないと困る」。
これもまた探していた言葉だ。
私たちは根津あんくるを「飲食代」を受け取るだけのお店になどしたくない。
飲食の対価だけでない、表現しようもない何かにいつまでもこだわりたいからこそ、
この店はこの地、谷根千に錨を降ろしたのだから。
大切にし大切にされるその姿を叶えたくて降ろした祈りの錨なのだ。
本書がその初心を奮い起こしてくれたこと、
そして本書をご紹介くださったP.H.メディアTOKYOの的場正信社長に感謝したい。