この本の大きな特徴は、声に関する本であればまず100%載っている、滑舌の練習の早口言葉や、
母音子音の練習「アエイウ…」「ガゲキグ…」などといった、発声の例題の類が一切存在していないことだ。
著者は、「いい声」とは「その人らしさを表す、個性的で、素直で、率直な声」「心地よい響きを持ち、
まっすぐ相手のもとに飛んでいく声」と言う。
小手先の滑舌などのテクニック以前に、もっと大切なものがあるという著者の主張に他ならない。
その象徴が、「声」を、人と人とのコミュニケーションや仕事のためのツールというだけに留まらず、
「人間の命の根源から発せられる音」と言っているところだ。
生まれた時の産声に始まり、人が声と共に成長していく様子が書かれた章は壮大だ。
また、タイトルは「声の魔法」だが、声のために欠かせない呼吸法(腹式呼吸)がていねいに解説してあり、
この著者の良心的なポリシーと実力を感じる。
最近公開されて好評を帰したスウェーデン映画、「歓びを歌にのせて」の主人公の指揮者のセリフ、
「誰にでもその人にしか出せない声がある。それを見つけろ!」を彷彿させる本である。