こうした言葉は「日本語の宝石」、暗誦することによってその宝石を「身体に埋め込む」ことができると著者は言う。声に出し、身体で美しい日本語を覚えれば、意味はわからずとも潜在的な日本語の力を身につけることができる。
「腹から声を出す」「リズム・テンポに乗る」などのグループごとに選ばれた宝石たちは全部で76。「祇園精舎の鐘の声」(『平家物語』)といった古典の名句のほか「どっどど どどうど どどうど どどう」(『風の又三郎』)「はっきよい、のこったのこった」(行司のかけ声)など楽しいものがたくさん収録されている。
各文には作品が書かれた背景、声に出すときのポイントなどを丁寧に書いた解説がついている。著者自身の体験や、「兼好法師は『上達論おやじ』である」といった独自の言いまわしがまたおもしろい。気に入った言葉を覚え、ひとり朗々と暗誦したり、親子で声をあわせるのもいい。漢字にはふりがながふってあるから、子どもひとりで暗誦することができる。
読む、のではなく著者が言うように「使い切る」ことによって本領を発揮する良質の日本語テキストだ。(門倉紫麻)
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しかし、著者はこの本の中で、以下の様に述べている。
「幼い頃に、意味のわからない文章を覚えさせるのは拷問とも言える強制だという考え方がある。私はこうした考えに与しない。できるだけ早い時期に最高級のものに出会う必要があるとむしろ考える。意味がわかるのはそのあとからでもよい。たとえ意味がわからなくとも、その深みや魅力は伝わるものだ。よしんばそのときに魅力を感じなかったとしても、後年それを覚えたことに感謝するときが来る。」
なるほどなと思った。暗誦に対する考え方を変えた。この本の中で、私は般若波羅蜜多心経がとくに印象に残った。声に出してみて、とても懐かしい感じがしたのだ。多分、今までにも何回かどこかで聞いたことがあって、心のどこかにあったからだと思う。
この本には暗誦するべき最高級の材料がのっている。
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