本書では、仏像・文化財修復のNPO法人を主宰する飯泉太子宗氏により、地方の文化財(とりわけ仏像)の置かれた状況とその修復にまつわる話が紹介されています。地方の文化財が置かれた厳しい状況の中、地元住民とNPOが協力して地元の文化財を後世に残そうする取組には頭が下がると同時に胸のすく思いがしました。
飯泉氏は2009年現在で35歳と若く(レビュアーは修復職人は高齢だと勝手に想像していた)、仏像の構造とガンダムのプラモデルとの対比があったりして親しみを感じます(「6造り方はプラモデルと同じ―制作方法の話」P.43)。しかしながら、仏像の印相や修復技術の解説からはやはり専門家なのだと認識させられました。文章は軽快ですが、文化財に対する誠実さや修復という仕事に対しての愛情を端々に感じます。
文化財激戦区である京都・奈良と地方とでは文化財の置かれた状況は大きく異なります。地方では京都・奈良ほど文化財が観光資源として定着していません。地方自治体に文化財の専門教育を受けた人材がいることが稀なうえに、予算配分では文化財よりも住民生活が優先されるためです。文化財に対する年次予算が1万円未満という場合すらあるようです(「37修理が先か、指定が先か―指定文化財の話[1]」P.210)。
そのため、地方の文化財の保存管理は地元住民の有志に委ねられざるを得ない状況です。そうした中、集落だけで高額な修復費用を背負い込まずに広く寄付を募り、地元住人とNPOが連携して薬師堂と薬師如来像の修復を果たした茨城県石岡市菖蒲沢集落の事例は先進的であり、同じような状況にある集落住人を勇気付ける話だと思います(「39廃寺の仏像を守る―地元集落での保存管理の話」P.219)。
文化財保護関係者のみでなく、学校や地方行政関係者にもお勧めです。中学・高校の美術や道徳の教材としても使えるかもしれません。