現代ではちょっとした職場だとIDカードを首から下げていたりします。カードで、その人が誰であるか認識しているわけですね。
じゃ、そのカードを紛失したらどうなるのでしょう?その人は名前を失うことになる?
自分の名前を忘れたわけではないのに、カードを無くしたことで名前を失う。
もっと最悪の場合、そのカードを使えば他人がIDカードの人物になりすますこともできてしまいます。
よくよく考えてみれば、それってとても怖いことです。
で、阿倍公房『壁』です。
難しいです。前衛的といっていいのかどうか……もちろん日本語で書いてある文章なんだけど、それでも何を書いてあるのか理解するのはよほど神経磨り減らします。
壁って、何でしょう?乗り越えるもの?ぶち壊すもの?迂回するもの?下から潜り抜けるもの?あるいはテレポートとかワープといった反則もアリでしょうか。
でも逆に、外の世界から守ってくれる盾かもしれません。そもそも自分が居るのは、壁の内側?あるいは内側に見えて実は外側だったりして……
そしてIDカードって大抵は、壁に囲まれた特定の範囲の中で有効なものだったりします。
名前というIDカードを紛失した時、壁に対してどう挑めば良いのでしょうか?そんなことを考えさせられた作品でした。