美術評論家である中原佑介氏も「ヒトはなぜ絵を描くのか」の中でこの命題を扱われています。
1940年に発見されたラスコーの洞窟壁画はあまりに有名ですが、今ではその保存のために中へ入ることは厳しく制限され、各地に点在する洞窟壁画も閉ざされた空間になることが予想されます。その意味で古代の音と絵画の関係はよりいっそうクローズドな方向に向かっているようです。
欧州では以前から洞窟と音の関係を研究されていた様子ですが、この分野の日本語文献はまだまだ少ないため私には初見に近い状態でした。よって、洞窟と音の関係において定量的に客観的な方法で確認し得るということがあったことが、本研究のもたらした知見でした。
そもそも、どのような人々が何を目的に此処に居たのか想像してみることに興味をそそられますが、宗教以外から想うとすれば、ドゥルーズ/ガタリの「千のプラトー」が忘れられません。(370pから一部抜粋)
"人間の芸術は、長きにわたって、芸術自体とは性質の異なる労働や儀式にとらわれてきた。[中略]むしろ、領土内にあらわれる二つの効果に注目すべきなのだ。二つの効果とは、諸機能の再組織と、諸力の再結集のことである。機能的活動は、領土化すると必ず新たな様相を呈する(住居を建造する場合のように、新たな機能を作り出すこと、あるいは攻撃性が同種間に成立し、その性質を変える場合のように、旧来の諸機能を変換すること)。ここに特殊化の、あるいは職業のテーマが芽生える。"
多様な観点から、絵画史において古代と現代を結びつけるアプローチがなされたこと画期的に思います。
音と身体そして観察することに鋭敏だった人々がここに居たと思いたいところです。
またこの書の姉妹品に、土取氏ご自身がクーニャック洞窟にて演奏されたCD「瞑響・壁画洞窟」があります。