「ルールを守って国際化」。法務省入国管理局の合言葉を聞けば、「私たち」は「そりゃ、そうだろう」と思う。「不法滞在」、「不法就労」という言葉を「強制収容」や「強制退去」という言葉とセットで耳にするとき、「私たち」は「不法なんだから仕方ないよね」とつぶやく。
本書は、「私たち」の知らない外国人収容所の壁の内側を、収容された人たちの証言によって克明に描き出した労作。国際機関職員、学生、宗教者、教員、医師、弁護士。さまざまな立場の執筆者が、収容された人たちとのつながりの中から、壁の内側がどんな世界なのか、そこでなにが行われているのか、壁の内側で「私たち」に知られることなく流されている涙を伝えてくれる。それは、「私たち」がつぶやく「仕方ない」に、「ほんとうに?」と問いかけてくる。
執筆者の一人、山村淳平さんは「おわりに」でこう書いている。「入管で起きていることは多くの人にとって無関係である。知らなくてもすまされる。しかし、それに目を閉ざせば、新たな悲劇が生み出される」。
「不法」な人がどう扱われていようが、所詮は「私たち」と厚い壁で隔てられた別世界の人たちのこと。しかし、不法/適法の境界線は、「私たち」が思っているほど固定的で縁遠いものではない。厚い壁はそれほど厚くないかもしれない。本書で「私たち」が出会えるのは、入管に収容された「かわいそうな人」の問題だけではない。それは、日本社会がどんなことを「適法」としている社会なのか、「私たち」が生きている社会の「私たち」の知らない素顔でもある。