各地の街中に転がっていそうなヒビ割れた壁面の抽象的な美しさを切り取った写真集。いや、実際のところ結構格好いい写真が多いです。「パウル・クレー壁」「キーファー壁」など遊びに溢れた命名センスからも分かるように、美術の鑑賞眼も持った人だから可能な「選択と切取りのセンス」なのだと思う。
最近は写真作家として展示活動も旺盛にこなしているようだが、キュレーターによってはこの写真に都市論風の説明や理屈を添えたくなるのかもしれない。今年銀座で行った展示ではiPadを導入して地図画面と連動させた他、一般からの壁の投稿も受け付けたりしているし、少し前には壁写真を使ったスカーフをプロデュースしたりと、結構広がりのある試みを行っているのが興味深い。本質的にはタモリ倶楽部的な「いい壁」好きの道楽家の範疇にまだあるのだと思うが、単に「いい壁コレクター」の枠を超えたときに、結構「アーティスト」として化ける可能性も実は秘めているのではないかと感じる。実際この人のブログはセンスが良いので、興味のある方は覗いてみることをオススメする。