寝返りを打つこともできない病状にありながら、毎日墨汁一滴分、一行から二十行の文章をエネルギッシュに書き続けた正岡子規。
すべての楽しみがなくなり、今や飲食の楽しみも半減したとぼやく日もあれば、一人の歌人の作品を執拗に批判する日が続くこともある。小論文あり、本業の俳句を何句も書きためる日もあり。病床から見える景色を写生したような随筆も子規らしい。晩年の日常の正岡子規をとても身近に感じる。
ちなみに、私は「坂の上の雲」を第3巻まで読み、第三巻のはじめで正岡子規が逝き、登場しなくなった寂しさからこの本を「坂雲」と併行して読み進めた。根岸に保存されている子規庵を訪ねると、この「墨汁一滴」の世界に出会えることも書き添えておく。