人間の認識能力に全幅の信頼をおきp.213、「世界中の人々に、自己と他者を区別せずに愛し合p.53」うことを求め「世界中の安定p.54」を目指した墨子は、多数の門弟に諸国を遊説させ、大国の君主に侵略の中止を説得したりp.220する実践的行動のために、高度な知識・学問としての論理学的思考法をも身につけp.230、「守備戦に範囲を限ったうえでの兵法家p.230」であった。この本では墨子の言葉の紹介とその思想内容の解説がなされるが、その中で、古代中国にいて音楽はどう位置づけられていたか(礼の教化手段、天と人とを感応させる媒介p.178)や、鬼神(死者が鬼となったものp.152)についての思想家間の認識の違いp.154-153や人の運命は予め決まっているかといった問題に対する思想家間の論争p.200-204など、古代中国の思想界の姿が生き生きと浮かび上がってくる。