畝原シリーズは一貫して「社会の闇」や「人間の怖さ」をテーマとしているが、
今作は最近の若者の生態と、ドロドロの文学界がテーマといったところか。
これまでの道警や闇社会といった「巨悪」に比べると、背景がややこじんまりとした感はある。
以前から感じていたが若者を描こうとすると、どうも作者は典型的というかありふれた描写になってしまうようだ。
ちょっとずれたというかキ○○イを描かせると天下一品だが、若者の生態にはあまり詳しくないように思う。
携帯や出会い系を使ったコミュニケーションにはそれなりの取材の跡は感じられるが、ちょっとリアル感にかける。
どうしようもない社会の腐敗や悪意、想像を越えたキ○○イに対して、割と普通の常識人であるところの
畝原を配しそのコントラストで、前者の異常さをより際立たせるというのが、畝原シリーズのおおまかな構図だが、
今回はどうも「悪人側」のキレ具合が今ひとつで、それが今作のぬるさにつながっているような気がする。
畝原シリーズを読んだことのない人にはあまりオススメできないが、シリーズを読み継いでいる人には
登場人物たちのその後が気になるであろうから、そういう楽しみ方がオススメ。