1985年当時小学一年生だった私は、日航機墜落事故に衝撃的な印象を持ってはいたが、不謹慎ながら歴史上のものと捉えていた感があった。しかし、著者の取材はそれを大きく覆した。誰にでもある日常を、何の前触れも無く、何の落ち度も無く、壊されていった人々の不条理さ無念さ、社会システムの度重なるヒューマンエラーの犠牲となった人々を思うと、本当にやりきれない気持ちでいっぱいになった。とても他人事には思えない。またさらに、『墜落の夏』は事故原因の真実を見つめるため、あらゆる角度からの検証を冷静に試みる。時間をかけて入念に誠意を持って行なった取材であるからこそ、社会システムへの提言に真実味が帯びてくるようである。初版から10年以上経つが、決して色褪せない良書であると思う。