295ページという、平均的な小説と比べて、かなり薄い本。だけど読み応えたっぷり! さすがはニール・ゲイマン! この作品でカーネギー賞とニューベリー賞をダブル受賞という偉業をやってのけた唯一の作家です。
ゲイマンによれば、この物語はディズニー映画としても有名な『ジャングル・ブック』にインスパイアされたという。『ジャングル・ブック』では狼に育てられた少年の話、『墓場の少年』は幽霊に育てられた少年の話。いかにもゲイマンらしい作風です。
過去数年の間に『グッド・オーメンズ』、『アナンシの血脈』、そして『アメリカン・ゴッズ』などが角川からリリースされてきましたが、あちこちで書評を読むと、低評価が多い。やはりイギリス独特の癖というか、テイストというか、そういったのが日本人には受け付けにくいのでしょう。
でも、そんな「ゲイマン・アレルギー」(?)の人たちにこそ、この『墓場の少年 ノーボディ・オーエンズの奇妙な生活』を読んで欲しいです。
たいてい、幽霊の出てくる物語というとホラー、怪談という定番になりがちですが、ゲイマンの作品に出てくる幽霊たちの、なんと心優しいこと! 決して触れ合うことのできない霊が肉体を持った生者を育てるという愛に溢れた名作です。ボッドと名づけられた少年は墓場で幽霊たちに守られてすくすくと育っていきます。文字の読み書きは、墓石に彫られた文字で学んだり、姿の消し方など、霊界の者たちと住むための勉強が中心だったり、とにかくユニーク。
もちろん全ての幽霊が心優しいわけではありません。中には気難しい者や、スリーアという魔物ももいれば、グールと呼ばれる悪鬼がボッドを狙ったり、色々なことがボッドの身に起きます (傑作なのが、このグールと化した人物のうちの1人が元アメリカ大統領だったりして・・・)。
クライマックスは突然展開が速くなり、ページを捲る手の動きも自然に早くなってきます。
聞くところによると、これも映画化の話が進んでいるようで、2011年に公開される予定らしいです。詳細は不明。できればティム・バートンに監督してほしいです。
キャラの造形がマンネリな既製品となった個性のない宮崎アニメ化には、ぜったいしてほしくないです・・・・。