核や大災害で首都圏のみが崩壊した日本を描く作品というのは、結構伝統があると思う平松伸二さん『ブラックエンジェルズ』や工藤かずやさんの『望郷戦士』なんかもそうかも。最も有名なのは、なんと言っても廃墟に独立国を形成する大友克彦さんの『AKIRA』ですね。
水没した首都圏を舞台に5つの異なる話を描くというコンセプトで『サンデーGX』に連載した作品。さすがGXいい企画考える。越境というアイディアは、旧共産圏からのベルリンの壁を思い出させて、悪くないアイディアだと思った。僕は滅びモノが大好きなので、「なんで世界が滅びたのか?」という謎がテーマにならないこの作品は少し残念だったが、日常を愛するようになった女戦士や、車椅子の女の子を守ろうとして、女の子に守られることで対等になっていく話は、面白かった。大洪水で水没した首都圏の混乱するカオスに秩序を作ろうとする野心的政治家柏木弥々子の設定は特に面白かった。もっと政治と政治家の野心を描けたら面白かったのになぁ。やまむらさんは、そういうふうに政治や全体にはあまり興味がないようで、すぐ人間関係で回収してしまうところがSF好きには少し残念。匂い的には、士郎正宗さんの『アップルシード』や遠藤浩輝『EDEN』の初めの巻と雰囲気が似ている。ただ彼らと比べると、少しハードボイルド感が薄れるように感じる。世界観の作りこみの複雑さに差があるからねぇ。やまむらさんのほうが、青臭さのような青春臭さがテイストを感じる。そこがよくもあり、青くもある。