ジコチューな人々、モンスターなんちゃらは確実に増えているのに・・矛盾するように日本の子ども達は、世界にまれに見るほど自己評価がひくいという報道をみたことがあります。
家族や恋人や友人、社会と適切な関係を保って生きていくためには、適切な自己愛、または自己評価が必要なのですが、自己愛が「適切ではない」人々が年々増えているように感じられます。
高すぎる自己愛は「自己愛性パーソナリティ障害」や「反社会性パーソナリティ障害」の原因であり、自己愛が低すぎた場合本書のテーマである「境界性」や「回避性」のパーソナリティ障害が発生します。
不適切な自己愛を持つ人々がこんなにも増殖してしまった原因は、遺伝性の要因も多少はあるようですが、数十年程度で変わるとも考えにくく、社会における共同体の急速な崩壊、その結果もたらされる濃密で逃げ場のない親子関係を、著者は答えの一つとしています。
親だけの密室的な子育て(しかも最近の離婚率の上昇から推察すると崩壊しそうな密室!も増えているはずです)では、子どもに対する甘やかしも、こき下ろしも、なんの緩衝剤もなく全部子どもの心にに突き刺さります。密室の中で子どもの心はいつも親のなすがままコントロールされ、落ち着くところがありません。
子育てを担当するのが大家族であったり、地域社会で子育てに関わる人が多ければ多いほど、子ども個人に対する評価も多様で、そういう逃げ場が用意された環境であってこそ、適切な自己愛、いわば子ども自身のしっかりした居場所を見つけることができるのです。
境界性や回避性パーソナリティに対する対処方法は、要するに不適切な養育環境のせいで十分に育つことが出来なかった自己愛をもう一度作り直し、適切な認証をあたえること、つまりいい大人に対して子育てをやり直すことに他なりません。この「親代わり」になってくれるのが恋人や配偶者であった場合、境界性パーソナリティ障害はもっとも幸福な回復をしめすと著者は述べます。
本書第七章「境界性パーソナリティ障害を改善する」に紹介されていることば、「最下位のチームをコーチする」名言、心に沁みる言葉の数々に著者のなみなみならない治療者としての実力が示されていると思いました。この章だけでも一読する価値は十分と思います。
幸福な回復を手伝ってくれそうな恋人や配偶者に恵まれないワタシは、この名言の数々を座右の銘として心に刻みたいと思いました。