前巻の流れを引き継げばあと一歩でブレイクする事は間違い無いのに、何故かその寸前で前々巻の流れに引き戻されてしまうと言うー、何時もながらもどかしさを感じずにはいられない内容。
話が全体的に淡白でしつこさが無く、しつこさが無い故に強烈に記憶にとどまる事が無く、前巻で高まった期待感が肩透かしを喰らったような形となってしまい半ば悲嘆にも似た読後感が残されてしまった。
高橋留美子の最大の特徴は何と言ってもキャラクターに対する徹底した描き込みと個性の使い分けにあり、更には確立されたキャラクター像を以って話が幾筋にも展開される事が醍醐味の一つであるのだが、残念ながら本作に関してはそれらの特徴が殆んど活かされていないように思う。
即ちキャラクター自体は次々と登場させるものの、その位置付けとその後のケアが散漫である為キャラクター像が未完成な形で放置された状態にあり、個性を掴む事が困難であると同時に何処か他人行儀な感覚を覚えてしまう。
それ故『主人公持ち回り制』と言った独特のシステム−主題によって主人公が交代する(例:面堂〜殺生丸)−が殆ど機能しておらず、話が常にりんねだけを中心にして旋回してしまっているので自然変化に乏しく、実際ワンパターンな話の繰り返しばかりでキャラクターも単なる添え物としての役割しか果たしていない。
(鳳の原型は疑うも無くシャンプーであるが、シャンプーほど多くの属性{性格/人間関係等}を与えられていない為キャラクター像が脆弱であり、毎回りんねに擦り寄るだけの紋切り型の役回りしか演じ切れていない。シャンプーのようにヒロインに対するライバル意識/嫉妬心をもっと前面に出せば事情も異なるのだが、如何せんヒロイン自身も個性が弱いので相乗効果を期待出来ず、一応ライバルめいた言行は顕すも上辺だけの空疎な内容に終始してしまっている)
とは言え作者の力が著しく衰えている訳ではなく、いわば“金の鉱脈”を掘り当てる事には半ば成功しており、あとは掘り下げさえすれば自ずと結果が産み出される事は明らかなのだが、何故かその寸前で必ず.逡巡/躊躇してしまっており、まるでその姿は自ら意図的に人気が高騰する事を忌避してしまっているようでもある。
「らんま」が当初の格闘競技路線に微調整を加え、中盤から“男と女/女と女”の普遍的/恒久的な人間関係を描き得たようにー、既に序盤を過ぎた現段階においては求められているのは現路線からの脱却/飛躍であって、決着普遍的なテーマへの到達無くして高橋留美子の本領は発揮し得ず、その為にはキャラクターの機能的独立と多元的利用を徹底化してほしいと思っている。
何時までも金太郎飴的な話の展開を容認するほど、ファンも世間も甘く無い筈である。