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もしあの列車にふじ子が乗っていたら、信夫でなくても多くの人が愛する人のために身を投げるかもしれない。
しかし彼は愛するふじ子が待っているかがやかしい未来を捨て、
多くの人命を救うために自らの命を差し出した。
信夫は私たちが軽々しく口にしている愛以上の、それを飛び越えた人間愛を持ちえる人なのだ。
もちろんそれが彼の人間性の基盤となり、ふじ子との愛をすくすく育てていったのは言うまでもない。
でも信夫は生まれながらの聖人ではなかったところに、私はもっと心打たれる。
人を下げすんだり、欲望に征服されそうになったこともある信夫だったからこそ、読んだ私たちには彼の生き様が頭から離れないのだ。
彼が鉄道員として働いていたときの仕事場の人間関係は、今働いている私にとって、何よりもの教訓となった。
言葉ではなく、行動によって示し、周囲の人々に多大な影響を与えていく姿に、
日ごろ会社の不満ばかりもらしていた私には、恥ずかしい気持ちになった。
そしてあとがきでこの作品の題材となった人物が実際にいたことに、ますます驚いてしまった。
あなたが人に「愛している」というときに、その愛は何なのか、もう一度か考えてみてほしい。
勘違いをしないでもらいたいのですが(する人もいないと思いますが)、
これはキリスト教を物語の支柱の1本として置いています。
しかし、決してキリスト教の勧めのような、
偏った宗教色の強い作品ではないので。
あらすじなどを見て、もし万が一そう勘違いして本書に手を出すのを控えていた人がいれば、読んでもらいたいです。
人間としてあるべき道を示唆してくれ、
荒んだ心に静謐で慈愛に満ちた光を与えてくれる本書は、
一生手放したくない、私にとってはかけがえのない名作です。
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