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報道の脳死 (新潮新書)
 
 
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報道の脳死 (新潮新書) [新書]

烏賀陽 弘道
5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (13件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

なぜ新聞、テレビの報道はかくも陳腐なのか?パクリ記事、問題意識の欠如、専門記者の不在……役立たずな報道の背景にあるのは、長年放置されてきた構造的で致命的な欠陥だ。豊富な実例をもとに病巣を抉る。

出版社からのコメント

【抜粋】 はじめに 「3.11報道」で見えた日本の報道の問題点は何でしょうか。「ポスト3.11」という新しい時代に、報道はどんな姿になるのがいいのでしょうか。そのためには何をすればいいのでしょうか。それを議論するための一つの視点を提供すること。それが私がこの本を書く目的です。 2011年3月11日に起きたM9・0の東日本大震災。それが引き起こした巨大津波。そして福島第一原子力発電所の暴走と、放出された放射能による広範囲にわたる放射能汚染。どれひとつとっても国や社会が想定しうる最高度の甚大クライシスです。これより深刻な危機は「戦争」「大規模テロ」ぐらいしかありません。 このクライシスをまとめて「3.11危機」あるいは単に「3.11」と呼びましょう。3.11は日本という国が維持してきた様々なシステムの問題を露呈しました。東京の中央省庁、地方行政、電力業界、学界など、数が多すぎて数えきれないほどです。地震の巣のような日本の上にある原子力発電所が、実は想像以上に脆弱であること。放射能の飛散予測、住民の避難など「万一」に備えた準備をしていない、あるいはしていてもほとんど役に立たなかったこと。その多くが論者の指摘と批判を受けていますので、ここでその全部を上げることはしません。 その中でも新聞やテレビを中心とした「報道」のあまりにも惨めな醜態の数々に、被災者だけでなく、読者・視聴者は激しく落胆し、怒りました。私は福島県の被災者に聞いて回って確かめましたが、報道が機能不全を起こしたために、とるべき行動がわからないまま放射性物質に被曝する実害まで起きています。こうした「報道が本来果たすべき機能を果たさないために、国民の生命や財産が大規模に毀損されること」を、私は「報道災害」と呼んでいます(詳しくは『報道災害 原発編』〔幻冬舎新書〕をご覧ください)。 東京の都心に家族と暮らす一人の市民として、私は放射性物質の影響から避難する必要があるのかどうか、3月11日以降、必死でテレビや新聞を注視しました。しかし結果は虚しかった。いくらそこに書いてあることを丹念に読み、スクラップして情報をつなぎあわせても、逃げるべきかどうか、わからないのです。私は新聞社に17年勤めた「ニュース記事をつくる側」の人間ですが、その私でもさっぱりわからないのです。一般の人々はもっと混乱したことでしょう。 結局、外国のニュース媒体のサイトや政府機関のウエブ、ネットラジオ、果てはツイッター、フェイスブックといったSNSまで連日ぐるぐるまわりようやく「どうやら東京から危急に脱出する必要はなさそうだ」という感触を得たのです。その判断の根拠になった多くは、外国の政府やニュース、SNSで知り合ったアメリカ人やヨーロッパ人が教えてくれた情報であり、日本の新聞やテレビは「存在してもしなくても同じ」くらいに不能でした。 私たちはもう、結論を出していいのではないでしょうか。「戦争にも匹敵する危機の中、市民が命をかけた判断をするときに、判断材料として役立たない報道に何の存在価値があるのだろうか」と。「存在価値はない」と。

登録情報

  • 新書: 255ページ
  • 出版社: 新潮社 (2012/4/17)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4106104679
  • ISBN-13: 978-4106104671
  • 発売日: 2012/4/17
  • 商品パッケージの寸法: 17.2 x 11 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (13件のカスタマーレビュー)
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29 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:新書|Amazon.co.jpで購入済み
3.11からしばらくの後、全くと言ってよいほどTVを見なくなった。口幅ったい物言いかもしれないが、ただ騒々しく、穢らわしいとまで感じるようになったからだ。

 事実、3.11の報道に対して、日本のTVは(それまでと同様)無力だった。地震・津波の直後は、いわゆる当局発表そのままの「20kmの同心円」が描かれた日本地図を背景に、SPEEDIのデータはおろか、風向きすらも考慮に入れない、役に立たない解説がだらだらと流れた。ドイツ気象庁のウェブサイトは早くからトップページで日本地図と放射能の飛散状況を提示していたにも拘わらず、だ。その後、甚大な放射能被害について、当局や東京電力株式会社への、真実を明らかにするような責任追及は何もなかった。東電の、資本・人的ネットワークが、この国の権力構造とどのように、どの程度関係しているのか、TVからは見えてこなかった。絶望した。東京電力の2010年に広告費として260億円もの金を使っていたのを知ったのは、昨年9月の英エコノミスト誌を通してだった。

 新聞でも状況は似たようなもののようだ。このクライシスの最中に、ニュースと呼ぶべきでない、「微笑ましい」逸話を、各社揃ってニュースとして取り上げていたのだ。たとえば、津波で流されずに生き残った、復興のシンボルとなるべき松の木の話など。

 僕は、こうした「パクリ」の記事が存在することを、本書の著者である烏賀陽氏のウェブ上での報告を読むまで知らなかった。そうして、氏が、被災地を取材し報告する情報にいちいち愕然とした。原発近くのコンビニエンスストアが丸ごと放置され、腐臭を放ち、ATMは破壊され、金が奪われていたというJBPRESSの記事は、その中のただ1つの例に過ぎない。

 著者の烏賀陽氏は、1986年から2003年まで朝日新聞社に勤務しておられ、僕のような新聞社の内情に疎い人間には信じがたい「内輪の論理」をよく知っておられる。どうして、ニュース価値のない記事が記事になるのか、どのようにして、日本のマスコミがアジェンダ・セッティング(「より善い輿論を創るための議題設定」)の能力を著しく欠くようになっていったのか、肌で知っておられる。そうした話を本書で詳しく知り、僕はただ悔しいと思った。僕たちは、僕たちが制度の中に当然持つべきものを欠いているのだ。

 『報道の脳死』というタイトルは、ジャーナリズムの理念を体現する機関としてのマス・コミュニケーションが、日本において死滅したことを示している。具体的には、市民の自由のために、権力から独立して権力を監視し、真実およびその意味(世界像の中の位置づけ)を伝え、アジェンダを設定し、開かれた言論空間を用意するべき機関が、日本においては3・11以後、機能不全にあるということだ。1981年に生まれた僕にとっては、そうした役割をかつて新聞社が担ったのだという記憶はない。(権力に与するマスコミの姿は知っていても。)ただ、とりわけ3.11以後、日本の旧メディアに強い不信感を持つようになった僕にとって、それらは死んだも同然だ。

 著者が書くように、インターネットがこれからの報道のメディアとして主流になるのは間違いない。ただし―これも著者が書くように―現時点では、インターネット上には、価値ある記事にお金が支払われる仕組みも、次世代のジャーナリストを育てる土壌も、まだない。烏賀陽氏は、その両方をネット上で実践しておられるユニークなジャーナリストだ。氏の普段の報道の仕事に敬意を払うとともに、高い倫理観と問題意識をもったジャーナリストを育てる試みを応援していこうと思っている。
このレビューは参考になりましたか?
41 人中、34人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 既存メディアに最後通告! 2012/4/15
By koji
形式:新書
私は、本書を読んで、著者は、まるで有名なアニメ「北斗の拳」の主人公ケンシロウではないか、と見紛ってしまった。
本書の冒頭で、著者は、こう宣言するのである。
「オールド・メジャー・メディアは、既に脳死(状態)である。」と。
著者は、17年間の朝日新聞での記者経験があり、同社退社後には、9年間のフリーランス記者として活動して来ている。著者は、日本ではとても珍しく、日本の「報道業界」のほぼあらゆる職種を経験しており、現在でも、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の3紙を購読している、という。
著者は、類稀な、報道ウォッチャーなのである。
本書では、その経験や知見が見事に生かされている。
第一章では、「新聞の記事はなぜ陳腐なのか」として、パクリ記事、セレモニー記事、カレンダー記事、えくぼ記事など、上記の3紙に頻繁に登場する記事について解説を施す。
これは、とにかく、3紙を併読していないと、決して分からない内容であり、新聞社内部での記者経験がないと、これらの記事の解説はできないであろう。これだけ読むことができるだけでも、本書を買って読む意義が十分にある。
第二章は、そのような陳腐な記事のオンパレードが何故続くのか、についての分析である。
それは、空間的、時間的、組織的な「断片化」によるものだと著者は言う。
第三章では、脳死状態に陥ったのは、記者クラブが問題の核心ではない、と述べる。
そして、第四章は、ジャーナリズムとは何か、という著者の疑問を解くため、著者が米国人に渡り、
『The Elements of Journalism』の著者である、ベテラン記者ビル・コヴァッチ(当時80歳)にインタビューし、また、カリフォルニア州の記者団体への取材し、これからの報道のあり方について考察する。
そして、当の日本の報道と米国のそれと比較して、と著者は言う。
「(日本の既存メディアは)ガラパゴス島の動植物のように、世界から切り離された島国で独自の進化を遂げた『亜種』ではないか。」(括弧内は、引用者による補足)
あああ、言ってしまった。
第五章は、ポスト3.11の報道の蘇生の可能性について、著者自身の試みと思考実験的な記述である。
著者は、言う。
日本の民主主義の根幹を支えるものとして、ジャーナリズムは必要である。
ただ、それは、既存メディアか、インターネットかという二元論的な選択ではない。
それは、誰がジャーナリズムを担うか、という問題である、と。
そして、ワイルドカード・シナリオ(もっとも大胆な仮定)として、このような思考実験を行う。
「もし、きょう日本の新聞社やテレビ局が全滅してしまったら、社会からどんな機能が失われるだろうか。」
それは、初等ジョブ教育、マネタイズの2つである、と。
最後に、ポスト3.11の報道の蘇生の可能性について、著者は、楽観していない、という。
本書は、ジャーナリズム外側にいる読者である我々に、非常に重要な情報をもたらしてくれている。
私には、これらの論点について逐一論評するだけの知見も力量も兼ね備えていない。
私は、単なる素人の本読みに過ぎない。
しかし、これは、今後の日本の報道について考えるにあたっての必読文献の一つになるだろうと考える。誰でもが気軽に手に取れる、とても新書ならではの内容である、と考える。
また、本内容の執筆者として、著者の、烏賀陽弘道は、最も適格な人物であった、と私は考える。
このレビューは参考になりましたか?
3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:新書
米欧が必ずしも、卓越したメディア環境を有しているとまでも思わないが、

資本、そして競争構造の面においては、
日本のメディア環境に対する、何らかのインプリケーションがあるのではないか。
(直ちに役立つ云々、というより、
 違いを違いとして認識しておく意味があるのではないか。)

・(より意義ある)報道の成立、と、
・資本として(企業として)の成立 
が表裏であることは、

(当たり前だが)
忘れてはいけない、分析点なのではないか、と感じる。

米国にいらっしゃった経験から、
この分析に一章を割かれていたならば、
より著者のカラーが出た(読み物として面白い)
一冊に仕上がったに違いない。。。
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