アラビア語通訳として、異文化コーディネーターとして、民間から選ばれてサマワで自衛隊と行動をともにした金子氏のレポートだ。おそらくこの本は「貴重な従軍ルポ」という形で受け入れられ、評価されていくと思う。イラク情勢や自衛隊、軍事といったことに関心のある人々は、確実に手にとって読む一冊となるに違いない。
元々大学で文化人類学を専攻して「アラブの部族研究」を専門にしていた人だけに、サマワ周辺の諸部族の状況や生活文化、といった情報も多彩に盛り込まれているので、アラブ圏の地域研究をしている読者にも貴重な情報は多い。
しかし軍事関係、アラブ学関係といったフィルターをすべて捨て去っても、この本は「異文化対応マニュアル」として抜群に優れている。自分の背景にある文化と異なるものとぶつかったときに、どうとらえ、どのように行動するべきか、というヒントが、この本には様々な形で描かれている。これから世界を目指す若い読者に、また「異文化コミュニケーション」という言葉に何らかの引っ掛かりを感じる読者に、是非とも一読をお薦めする。