安吾のエッセイ集の決定版です。
小説家に贈るべき賛辞ではないかもしれませんが、安吾はやはり随想が面白いです。
しかしその面白さは、あくまで『小説家の書くエッセイ』のものである為、
安吾が小説家向きでなかったことにはなりません。
小説家でなかったら、こんなに面白い随想は書けなかったでしょう。
一言で言うと安吾の随想は、
『小説家自身の手による、小説のネタばらし』なのです。
これは外部から批評するだけの批評家には決して書けないことです。
小説家としてそれをやってしまっていいのかよ、と突っ込みたくもなりますが……(笑)
『堕落論』『続堕落論』における、
心の弱さを補う道徳・倫理を他人に求めず、自分自身に求める決意、
また虚妄を打ち破る為なら淪落を厭わぬ決意、
『日本文化私観』における機能主義、『デカダン文学論』における壮絶な漱石批判、
『不良少年とキリスト』における太宰治への愛情など、どれも痛快です。
エッセイ全体を通底する志賀直哉嫌いにも注目です(笑)
また、小説『女体(
桜の森の満開の下・白痴 他十二篇 (岩波文庫)収録)』の創作日記である『戯作者文学論』からは、
実際の安吾の創作過程が読み取れ、興味深いです。
この本で興味を深めた方は、
講談社学芸文庫から出ている2冊のエッセイ選集にも手を出されると良いでしょう。
目次
『ピエロ伝道者』
『FARCEに就て』
『ドストエフスキーとバルザック』
『意欲的創作文章の形式と方法』
『枯淡の風格を排す』
『文章の一形式』
『茶番に寄せて』
『文字と速力と文学』
『文学のふるさと』
『日本文化私観』
『青春論』
『愕堂小論』
『堕落論』
『堕落論〔続堕落論〕』
『武者ぶるい論』※
『デカダン文学論』
『インチキ文学ボクメツ雑談』※
『戯作者文学論』
『余はベンメイす』
『恋愛論』
『悪妻論』
『教祖の文学』
『不良少年とキリスト』
『百万人の文学』
※全集未収録。本書でしか読めません。