江戸時代を舞台にした小説は結構読んでいるが、米問屋の世界を描いた小説は初めてだ。
主人公の吉左は極貧の小作の長男だが、後妻に疎まれて16歳にして家から追い出され、大阪の堂島の丁稚として米問屋の山代屋に奉公することになる。16歳で丁稚に行くのは、当時の世界ではかなり遅い方で、吉左は年下の丁稚の下でこきつかわれることになる。
この物語は、そんな吉左が下積みから、商才を発揮して這い上がっていくのがメインストーリーだが、興味深いのは当時の米の取引の世界だ。この時代に現代の商品先物のような相場が既に成立しており、現代の株取引のように先物を売り買いしてヘッジしたり、投機を行ったりしていたとは全く知らずびっくりした。小説なのでどこまで本当かと思う部分もあるが、現代のデイトレーダー的な取引まであるのには驚いた。
物語としても、当時の丁稚奉公の風習や、吉左と高嶺の花の両替商との娘の恋物語や、吉左を取り巻く人々との友情や交流などが、きちんと描かれており、最初から最後まで楽しむことができた。