第4巻からの流れで第5巻のテスト勉強に夏休みに宝探しではしゃぐ良、という流れが結構意識して構成されていると思います。
この津山さんの構成がなかなか見事で、伊沢さんの描く絵の可愛らしさとの相乗効果で楽しい作品です。
この漫画は「庶民」であった良が「お嬢様」になるまでの道のりが一つの軸であるわけですが、そこに「執事」である伯王がどう絡むかに注目して読み進めると別の面白さに気付きます。
「お嬢様」という概念は二通りに分けて捉えられると私は思います。
まず薫子さんのような、名家に生まれ名門の環境で育った、家柄と財産を兼ね揃えた生まれからしてお嬢様であるタイプを「遺伝的なお嬢様」とでも云いましょうか。
対して良ちゃんは、名家の血統ではあっても「庶民」として生まれ育ち、名門の双星館に放り込まれてお茶にお花に教養を叩き込まれている、「改良種としてのお嬢様」(になる過程の女の子)と言えると思います。
そのどちらもが「双星館のお嬢様」というブランドであり政略結婚の道具にもなりうる存在なわけですが、果たして良妻賢母としての家事や洗濯できる必要があるのかというのは一つの焦点です。
「本物のお嬢様」というのは「自分じゃ何もできないしできてもやらない」という方がらしいような気がします。なんのためにこの作品に何でも出来る完璧な「執事」(の見習い)が居るのかというと、何もできずただ美しい物を愛で趣味の世界に没頭するだけの無能なLクラスのお嬢様達の身の回りの世話を一手に引き受けるためだと思います。
つまり良ちゃんはお菓子作りが得意で、他者を思いやる優しく素直な心を持っている時点で既に「ブランドとしてのお嬢様」にはなれないわけです(笑)
執事としても、良ちゃんのような明るく真っ直ぐな可愛らしい女の子は忠誠を誓う「ご主人様」とするには難しいでしょう。夏休み、神澤家の別荘で伯王と良は「男と女」として更に一歩接近します。伯王が子供の頃の宝物を忘れて新しい宝物(良ちゃん)を見付けてしまったわけですから。
この作品はどう完結するのだろう? という事を考えると、やはり良と伯王がくっつくんでしょう。
男と女の関係になった時、良と伯王の主従関係は解消されるはず。そもそも第1巻を読み返すと、伯王が良ちゃんに忠誠を誓った理由(条件)が「美味いケーキを食わせてくれること」という、「ブランドとしてのお嬢様」の概念とはほど遠いものでしたから。良の両親は執事と跡取り娘という関係でありながら駆け落ちしましたが、良と伯王が恋仲になれば同じ試練の繰り返しになるのでしょうか。