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城下の人―石光真清の手記 1 (中公文庫)
 
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城下の人―石光真清の手記 1 (中公文庫) [文庫]

石光 真清
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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登録情報

  • 文庫: 330ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (1978/7/10)
  • ISBN-10: 4122005507
  • ISBN-13: 978-4122005501
  • 発売日: 1978/7/10
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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形式:文庫
「坂の上の雲」に出てくる秋山真之はバルチック艦隊とともによく知られているがこの石光真清の名を知っている人は少ないだろう。同じ明治元年(1868)生まれで同じ軍人の道を歩き日露戦では同じ少佐で従軍した。二人は明治という近代日本の歴史舞台の表と裏を生きたのではないか。そして二人とも誠実であった。この手記は年代順に4編に分かれた構成。手記ではあるが時代を超えた伝記小説としての興奮をもたらす。

石光真清は昭和17年まで生きたがそれはまさに時代が歴史を刻むのに歩をあわせた生涯であった。明治維新の動乱とその後の富国強兵策、そして大陸への進出と日清、日露戦役に見る人の世の移り変わりは「坂の上の雲」にも詳しいがこの石光真清の手記もまた編者のいうとおり身をもって日本近代の歴史を前者に劣らず語ってくれる。ともあれ焼却されんとしたこれらの膨大な資料を良く纏め上げた編者(長男真人氏)の労に感謝したい。

 

「城下の人」は題のとおり細川藩士産物方頭取石光真民の次男として熊本城下に待望されて生まれたところから始まる。やがて西南の役が始まり城下の住人として戦火に巻き込まれてゆくが、子供の目を通した新旧の戦いの様や風俗の変化が新鮮だ。樺山資紀、児玉源太郎、野田豁通などその後の歴史上の人物も出てきて興味が尽きない。その後畏敬する慈父を亡くして東京に出るが幼少年期の親子、家族、人々への情愛は手記全編を貫いている。

明治16年陸軍幼年学校入学。同22年士官学校を卒業し近衛歩兵隊の少尉で任官。28年日清戦への出征があるがその直前、兄真澄急死の知らせの場面は切ない。その後台湾での長く苦しい掃討作戦に従事して危うく帰国。29年に結婚。多くの人との邂逅と別離がある。32年休職しやがてその後の人生を大きく変えるロシア留学(その後の諜報活動準備)の途にのぼる。いよいよ大陸での波乱万丈人生の開始だ。
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形式:文庫
本書(『城下の人』)の著者=石光真清が晩年に原稿焼却の試みを思い止まってくれて、本当に幸いであった。明治元年八月熊本生まれの著者は、年少の頃とは言え、神風連の乱、西南戦争を同時代人として見聞している。幼名を正三といった著者が座敷で目撃した熊本鎮台からの客は、美髯が目立つ不惑の少将谷干城、そして樺山資紀中佐と児玉源太郎少佐の三人だったという。

一方、著者が出会った薩軍の将は、熊本城攻めの総大将を務めた池上四郎と岩倉遣欧使節団に随行しそのままフランスに留学した村田新八だったという。歴史ファンの一人としては思わぬ登場人物にわくわくするが、激戦の田原坂、城山で空しく散った薩軍将帥の最後を、著者は複雑な思いで耳にしたことだろう。

やがて亡父の希望どおり陸軍幼年学校から士官学校に通うことになる著者だが、初めての都会生活での紆余曲折ぶりが面白い。近衛師団配属となり、ロシア皇太子遭難の大津事件に際しての緊張対応や親友との意に副わぬ仲違いなどを経験しながら、青年将校として成長してゆく。

日清戦役では黄塵吹き荒ぶ中での行軍を経験し、続く台湾守備名目での清軍討伐では白兵戦を潜り抜け、蔓延するコレラとマラリアに罹りながらも九死に一生を得た。日本軍部の衛生管理の劣悪さ、無頓着さが記述からよく判る。小隊長に対する従卒の献身ぶりや台湾女性兵士の遺児を救出したエピソードは心温まるものがある。

本書は、著者念願の東部シベリアへのロシア留学を軍に許可されてウラジオストックに降り立ったところで終わる。時代の波に益々翻弄されてゆくのはこれからだと言わんばかりに…。無条件に読んで面白い、明治時代を文字どおり生き抜いた<武士の末裔>の貴重な実記録である。
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8 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By sirou55 トップ500レビュアー
形式:文庫
明治元年に生まれた著者が書き残した手記を死後息子の手によって完成させた。大正、昭和にわたる大作で全部で4巻になるが、この巻では生まれてからロシアに留学する明治32年までの出来事が書かれてある。

熊本細川藩の産物方頭取として藩の重責にあった父の四男として著者は生まれたが、明治になって次々と世の中が変わっていく様が子供の目線で正直に書かれてある。武士の子として育てられながら散髪廃刀令によって髷を切り刀を手離すように父にいわれてその通りにするが、相変わらず堂々と髷を結って刀を袋に入れて手に提げて往来を闊歩する神風連の人々に羨望の目を向けていた。
西南戦争では熊本城下に進軍してきた薩摩軍に子供心で見物に出かけ、実際村田新八と言葉を交したりしたが、戦火の熊本城下の様子を家族や親戚縁者を含め城下の人々がどのように生きたか活写している。その後著者は軍人となって日清戦争やその後の台湾討伐に加わるのだが、初めて突撃したときの様子が正直にリアルに書かれてあって説得力がある。

後の大蔵大臣高橋是清がペルー銀山事件に関わってほとんど全財産を失ったことを自伝に書いているが、この国際詐欺事件の代表を務めたのが著者の兄だったとは知らなかった。兄もこの事件で多額の債務を負うことになる。

大きな時代の波の中で家族が必死に生きていく様がまるで大河ドラマをみているように生き生きと描かれている。言葉もやさしくて読みやすい。
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