大学のころ池内訳を読んでいた。それ以前にも角川文庫版を読んだがこれがやはりいいと思う。 未完のまま終わっている小説である。測量士Kが招かれ、あれこれいろんな目にあうが、結局何もやらず、途中で小説は終わる。 この小説はカフカの生前発表されなかった。晩年に友人マックス・ブロートに「破棄してくれ」と頼んだという。 当然マックスはそのいいつけを守らなかった。彼の編集したバージョンがカフカの死後出回り、やがてもとのテクストのままになった。 カフカが言いたかった、伝えたかったことはなんだろう。カフカが残した短編、寓話同様、やはり彼が生きた世界の不条理、不安、理不尽さ、その他もろもろか。 それよりも彼は戯作をもっともやりたかった。彼は友人たちの間で作品の朗読を楽しみにしていたという。友人たちと笑い、笑われ朗読したという。 確かにカフカの残した話はオカシイ。笑えるものも多い。上で私はあれこれ理屈にもならない理屈をこねましたが、カフカがやりたかったのは結局戯作なんだと思います。マックス・ブロートの親切な裏切りにより彼の作品が読めることが嬉しい。そしてそれを池内紀さんの翻訳で読めて嬉しい。大学のころ没頭していましたが、このうえなく楽しかった。 この「城」は圧倒的に楽しめないひとが多いだろう。だがカフカの戯作が楽しい私にはいい読書になりました。