出羽の国で、家に伝わる霞流なる忍術を会得した主人公の松吉。が、これからの時代、忍術では食べていけない、江戸で医術を学ぼうと同郷の者と旅立つが、どういうわけか着いた先は天皇のおわします花の京。時あたかも尊王だ攘夷だと騒がしい時代。医者の家に書生として転がり込むことはできたものの、沖田総司や坂本竜馬とも顔見知りになって・・・。幕末の京都を舞台にした時代小説。
と思って読み進めると、最後に驚かされます。
夏目漱石『坊ちゃん』へのオマージュ作品ということで、松吉が次から次に様々な事件に巻き込まれていき、それを得意の忍術を使ったり仲間に助けてもらったりでなんとかかんとか乗り越え解決していく様は、読んでいてとても楽しい。が、これはおもしろい時代小説を読んだなぁと満足感に浸りそうになっている物語終盤にきて、え!何これ?と驚くような展開に。実験小説というかファンタジー小説というか・・・。著者らしいといえばいかにも著者らしいのですが、ここは普通に時代小説にしておいたほうが、数倍おもしろかったのではないでしょうか(まあ、そうなると今度は著者らしくないといわれてしまいそうではありますが)。なんとも不思議な小説です。
ちょっとしか登場しませんが、松吉の妹のお糸の健気な姿がとても印象に残りました。