ほっとする。多情多感な少年少女たちの心の揺れが、ものの見事に描かれている。これこそ正しい少女マンガだよな、と思う。「ケータイ小説」のように行間がなく過刺激な事件の連続でつなぐエンターテイメントが一世を風靡する時代に、こういう逸品が新作として読めるのは本当にありがたいことだ。
ヒロインの「薫さんは…都会っ子ね うち『勝ち抜く』とか ようわからん…」というセリフに「そうそうそうだよなあ」と共感し、親友とリズムをあわせる主人公の「駄目だ こいつといると どうしても楽しいや」という感情のたかまりに胸が熱くなる。ピアノの演奏によって恋心を伝えるなんて、イケメン芸人がネタにしそうなふるまいも、ここでは素直に素敵だと思える。
「66年」の「九州の田舎」という舞台設定があればこそ、この様な世界が成り立つのだともいえるが(あと千太郎と律子が「クリスチャン」というやや珍しい設定も重要か)、しかし何より素晴らしいのは、「青春」を嫌味なく表現することのできる著者の秀才だろう。巻末に収録されている短編もいい感じなので、他の短編集も読んでみたくなった。