同じ著者による『楕円とガイコツ』('99年刊行)の中でこんな告白文があります。
「あの本は実はほとんど間違いなのです」
その通り!刊行当時('91年)には訳も分からずただ分量(百科事典かと思った!)と小難しい分析に
圧倒されて終わりでしたが、あれから多少理論的なことを身につけた今読み返すと、トンデモ分析炸裂!
例えば、『王立宇宙軍』テーマ曲のただの転調でしかない箇所を愚直に同一調視してコードネーム化していたり、
『シェルタリング・スカイ』の本質であるベースの半音下降構造にまるで気が付かないままコード分析で
かきまわして収拾付かなくなった挙句の果てに「坂本は砂漠の響きに達したのだ」とかなんとか、
わけのわかんない結論でお茶を濁したりと、いやもう酷いのなんの。
『チック・コリアの音楽』で馬鹿ぶりが頂点に達した感のある山下邦彦。でも『ビートルズのつくり方』の
モード分析は素晴らしい。最終ページに紹介されている坂本の『ザ・シード』分析を除けば、だが。
『ウェザー・リポートの真実』もそうだったが、このひとはどうもセンチメンタルな資質があって、
『楕円とガイコツ』以後の冴えわたる(大スカもたまにあるにせよ)分析手腕を大いに損なっているように
思える。
当たり外れの大きい著者の、良くも悪くも出発点となった一冊。
そのおおはずれな分析ぶりにツッコミを入れられるレベルの音楽知識がある方なら
反面教師として読む価値あり。
各時期の坂本の発言が手際よく編集されていて読物としても楽しめる点を買って
☆はふたつあげます。