前々から気になっていた坂口安吾の著作を読みたいと思っていたが、どれから手をつけて良いものか判らないでいた。そこで、短編集的な本書を手に取ることにした。
安吾の著作はこれが初めてのため、詳しい事は判らないが、『堕落論』『日本文化私観』を収録しているので概説的な面から言えば初心者には申分ないと考えられる。
初見の率直な印象は、坂口安吾という作家は三島由紀夫ともまた違った「狂気」を兼ね備えている感がある。
なるほど『堕落論』『日本文化私観』ともに左派、リベラル派にとって聞き心地の良い、記述が目立つ。しかし、彼らがこれを安直に引用することは危ういと感ずる。例えば『続堕落論』には「最も天皇を冒涜する軍人が天皇を崇拝するがごとく…」とあるが、何てこたない富田メモの時のバカサヨクが取った言動がまさにこれである。
まんがで読破シリーズにも『堕落論』はあるが、引用が恣意的で安吾の複雑な思考への深い考察が全くない。
それと私事で恐縮であるが、笹幸恵氏の
『「日本男児」という生き方』において、著者の笹氏は戦争体験者との関わりを通じて『日本男児』を語るキーワードに『やせ我慢』を挙げていたが、これは安吾が批判的に捉えた『耐乏の精神』に類すると考え、これを比較する事が本書を読んだもう一つの理由である。
結果であるが、確かに戦前の日本に於いて人間として間違った形の『やせ我慢』は存在した。一方、現代日本人は安吾が「堕落しろ」と言った方向性とは間違った方へ堕落してしまったというのが現状の個人的見解である。
3.11以降、それは強く思う次第である。