この本の著者は山崎今朝弥である。戦前・戦後を通じて一貫して弱者救済の弁護士として活躍し、社会主義者としての筋を通した。特に、関東大震災の際の朝鮮人虐殺を、「天人共に許さざる大悪無上の話である」として断じた。官憲が朝鮮人襲撃のデマを流して虐殺したことを怒りをこめて皮肉ったものである。そして、朝鮮人に「低頭平心」して謝罪し、朝鮮の独立が問題解決の糸口であると結論づけた。当時の朝鮮人に対する差別意識が顕著であった頃に、こうした弁護をすることはかなりの勇気が必要であったことは言をまたない。ことに、官憲に飄逸な修飾語で煙に巻いたことは社会主義者としての面目躍如たるものがある。
また、山崎の奇行として、弁護士会の名簿に登録するにあたり、すべてのひとが法服姿であるのに、彼だけが裸で腕組みをした写真を掲げているのにはビックリした。邪心を持って判断しないということを態度に表したものといえるのではないか。この表題の「地震・憲兵・火事・巡査」も語呂があっているが、新聞広告には「菊判堂々三百余、定価僅僅金壱円、送代例例零十銭」等と謳っている。そして、借金の保証人になってくれと頼まれれば快く引き受けたが、そのハンコには「連帯保証無効の印」と彫られていた。
自分を「米国伯爵」と称したのも、米国留学を通じて社会主義の洗礼を受けたことによるもので、自分自身が伯爵であるのではなさそうだ。とにかく一読されることを推奨したい。