本書は、三葉虫の研究で著名な古生物学者リチャード・フォーティによる、地球科学の本で、地球史を語る上で、是非チェックしておきたい「地学名所」を、エッセイ風に紹介しているものである。
邦訳出版社の販売方針のためであろう、フォーティの前訳書『生命40億年全史』にそろえる形でこちらも邦題に「全史」がつけられているが、本書は年代を追って通史として解説されている内容ではない。この本においてフォーティは、上述のとおり地球規模での地質巡検(現地調査・踏査のことを地質学の専門の方はこういいます)を行っている。その巡検は、ベスビオ火山から始まりワイメア峡谷(ハワイ)、ニューファンドランド(カナダ)、アルプスやアフリカの大地溝帯・・・フォーティという超一流のガイドによる解説付きである。図鑑ではないため、絵柄が少ない。私のように、専門家でない方はPCをネットにつなげ、‘Google Earth’を参照しながら読むと、理解が深まるだろう。
博学な氏の筆は本書においても遺憾なく発揮されており、随所にユーモラスな表現もあって読む者を飽きさせない。フォーティの専門からは、少しだけシフトしているからか、『生命40億年全史』よりも肩に力が入っていないようだ。その分、さまざまな挿話が縦横にちりばめられており、きわめて興味深い内容を展開してくれる。
500頁を超えるボリュームの本というのは読むためにはそれなりの時間が必要で、読み終わってから再度読みたいと思うものはそんなに多くない。本書はもう一度読みたいと思わせる数少ない一冊である。
蛇足だが、本書のまえがきでフォーティが触れている「プレートテクトニクス」理論の確立については、テッド・ニールド著『超大陸』が詳しい。併読をお勧めする。