著者は岩波書店から『地球温暖化の経済学』という書物を上梓しているが、それを一般向けに平易に書いてはどうかという示唆を編集者から得て書き下ろしたものが本書である。
地球温暖化は化石燃料の大量消費と熱帯雨林の破壊による温室効果ガスの蓄積によってもたらされたという考え方をベースに、全体は地球温暖化が20世紀の文明を象徴するものであるという基調で書かれている。後者の内容は工業化と都市化、高度の発達した近代技術の存在が人類に大きな進歩をもたらしたものの、その対極での自然環境の破壊、先進資本主義国と発展途上国との経済格差の拡大、環境難民の増大である。
第6章の「炭素税の考え方」では、著者の得意とする「自動車の社会的費用」の考察から社会的共通資本概念の重要性を強調し、地球温暖化の対策に炭素税導入(種々の経済活動によって放出される二酸化炭素のなかに含まれる炭素の量に応じて税を徴収する)を支持しつつ、一歩進んで「大気安定化国際飢饉」構想をという形で具体化している(p.154-)。
また第7章の「20世紀文明に対する反省」では、ローマ法王の「レールム・ノヴァルム」を評価しつつ制度主義の経済学(一つの国のおかれている歴史的、社会的、文化的、自然的な条件を考慮して、すべての国民が、人間的尊厳を保ち、市民的自由を守ることができるような制度をつくることをめざす。社会的共通資本がどのように具体的に用意されているか、またどのように管理、維持されているかによって特徴づけられる)の可能性を論じている(pp.183-184)。
この章ではまた農業基本法を推進した東畑精一の学問的良心に触れている箇所(pp.191-192)、また「むつ小川原の悲劇」を要約している箇所が印象的であった(pp.192-196)。第8章の「新しい展望を求めて」では、千葉県成田市の国際空港反対同盟との対話についての叙述(pp.199-201)が意外でもあり、余韻として残った。