典型的なものが、江戸時代の循環型社会を理想とするような言い方です。自動車メーカーは、技術革新を通じていかに環境問題を克服するか、日々苦闘しています。そんな立場から見ると、時代をさかのぼる議論には違和感を覚えます。
その点、小宮山宏氏は、この本のなかで、現実的に達成可能な技術革新を積み上げながら、2050年に持続可能な社会を達成する「ビジョン2050」プロジェクトを提唱し、極めて論理的にあるべき環境対策のシナリオを示してくれます。
たとえば、二酸化炭素(CO2)の排出を減らすため、2050年には「いまに比べエネルギー効率を3倍、自然エネルギーを2倍にすべき」との目標を掲げます。
エネルギー効率を3倍に上げることは、いまのガソリンエンジンでは簡単なことではありません。ただ、世界の自動車メーカーが、その実用化を競っている燃料電池車は、まさに「エネルギー効率3倍」が目標になっています。
一方の自動車にとっての自然エネルギー活用は、バイオマス(生物資源)がカギを握っているでしょう。バイオマスはいまブーム気味に期待が膨らんでいます。なかには、自動車燃料はすべてバイオマス由来のエタノールなどで代替すべきとの意見もあります。そういう楽観論者からは、「自然エネルギー2倍」は少なすぎる目標かもしれません。
ただ、自動車燃料の多くをトウモロコシなどの作物に依存した場合、今度は食糧問題が深刻化します。そう考えると、一定割合のバイオマス由来の燃料を化石燃料に混ぜるという形になるはずで、「自然エネルギー2倍」は、現実的な目標だと思います。
CO2排出問題は、窒素酸化物(NOx)など、従来型の公害対策とはまったく異なります。NOxは技術革新によって限りなくゼロに近づけることが可能ですが、CO2の排出はエネルギーの消費そのものです。安易に理想論をかざすのでなく、いまの文明社会の現実を踏まえた議論が必要です。この本はその一つの考え方を示してくれます。
(日経エコロジー 2003/08/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
登録情報
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ヒートポンプによって投入したエネルギー以上の
熱エネルギーを得るというところなど、個々の技術に
ついての解説は、予備知識のない方が少々飛躍を感じる
面もあるかもしれませんが、(実はこのエアコンの
動作原理は、東大物理の教官が「教えにくい」とぼやくのを
聞いたことがあるくらい、解説が難しいらしいのですが…)
全体として、非常に説得力があります。
地球全体を考えた工学の、これからのあるべき方向を示している、
読んでおいて損の無い書物だと思います。
特に科学技術関係者には、必読と言って良いと思います。
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