ページを開いて、読み始めたら、一気に読み終えてしまった。
96ページのうすい本だが、中味はあつい。そもそも著者である加藤大吾さんが「熱い」人間だ。
都会育ちの彼が、家族で田舎にとびこみ、そこでの暮らしをモノにしてゆくプロセスは、読み手の心をゆるがす。
家づくりも、田植えも、サルとの格闘もまったく初めてのトライ。それをたくましく乗り切るストーリーは、いずれも心に残る。
それから、情報の質というか,密度もかなりある。全ページカラーで写真の点数も多い。チェーンソーはどの機種がオススメかとか、何ワットの電球だと電気代が月にいくらかといった、具体的な情報が満載だ。そういう意味でもページ数より「厚い」本、とも言える。今時の書籍は、体裁ばかりよくて、中味が無いものが多いが、この本は、実のある情報に溢れている。
もうひとつ「篤い」本でもある。篤志家の篤い。こころがこもっている、と言えばいいだろうか。彼から見る社会、都会の暮らしへの考察は、暖かく、そして深い。人が生きるとはどういうことなのかを根本から問うている。都市に暮らす多くの人の、生存本能を問い直すような一冊。
この本は、まるで現代の『森の生活』(ヘンリー・D・ソロー)のように私の心に残った。