内容紹介
「地獄ってそもそも何?」「誰がみたの?」
この素朴な疑問から出発する本書は、これまでなんとなく人々の間で共有されてきた地獄観を根底から覆す発見に満ちています。たいていの人は地獄(および天国)を、「死」という不可知な現実に対して、宗教家や民衆が想像力で作り上げた物語が、現代の「文明化された社会」にまで伝来してきたと信じているのではないでしょうか。もちろんそうした一面があることも確かです。しかし本書の著者・中川文人氏は「それだけでは地獄を説明したことにはならない」と、地獄の「起源」を探る思索に入ります。そして、芥川龍之介の『地獄変』や源信の『往生要集』などの古典を手がかりにし、ついには地獄の起源となる時代を突き止めることとにあります。「地獄の起源」などというと荒唐無稽な話に聞こえるかもしれませんが、著者本人の言葉を借りていえば、「正しい史的唯物論的方法」を用いることによって、非常に説得力のある形でそれは実証されます。この発見を梃子に、著者は創作物語(ヒバリの丘とナラクの国の運命をめぐる)『ナラクの悲劇』の執筆に取りかかり(本書に同時収録)、より普遍的な形で「地獄誕生の物語」を完成させることに成功しました。
アナーキスト思想家・矢部史郎氏が解説を書き、誰もが瞠目するに違いない「歴史の真実」に踏み込んだ、驚くべき成果といえると思います。とはいえ、本書は大仰な「歴史書」の体裁を取っているわけではなく、ときにユーモラスに、そしてときに残酷に「歴史の真実」を示唆してくれる良書に仕上がっていると思います。本書を読めば、あなたも歴史哲学者としての感性が揺さぶられることとなるでしょう。
内容(「BOOK」データベースより)
ファミレスで耳にした会話をきっかけに、3000年前のメソポタミアへと向かい、地獄と天国の「失われた伝説」を呼び覚ます。文明社会の呪われた起源を伝える、バーバリズム文学の誕生。悪夢を誘うファンタジー。ダンテ『神曲』、芥川『地獄変』を継承する、地獄物語の傑作。