『地獄少女』と言う作品は、アニメとコミックと言う二つのメディアにて同時進行で展開されている作品で、この小説版はメディアミックスの第三の展開となります。
アニメ版・コミック版は、基本的なコンセプトこそ共通しているものの、全く異なったファン層を強く意識した作りになっており、全くの別物と言っても良い内容となっているのですが、この小説版もまたアニメ・コミック版何れとも全く異なった切り口で『地獄少女』を描いています。ただし、アニメ版・コミック版は魅せ方の手法や、見所の設定に違いがあるものの、人が人に恨みを抱いてしまう過程や、遂には地獄流しを決意するに至るまでの葛藤を主に描くと言うストーリー構成面は概ね共通しているのですが、この小説版はこの点もかなり異なっているのが大きな特徴ですね。
著者の広真紀氏はアニメ版にも脚本担当として参加しておられる方ですが、それとは違った魅せ方を強く意識して執筆されたようです。アニメやコミックのイメージを持って読むとかなりの違和感を覚えると思いますのでご注意を。
物語は松宮渉と言うキャラを主体に進んでいきます。前半と後半で彼の立ち位置が大きく異なっているので二つのエピソードで一つの物語を描くと言う構成になっています。
前半におけるヒロイン・鶴木清香が最後に渉に送ったメールのなんともいえない生々しさや怖さ、後半登場する4名の、誰か達を微妙に連想させるキャラクターによる地獄流し体験談等は結構興味深く楽しめたのですが、主体たる渉を、非常に考えが浅く、物事を自分本位にしか考えられない若者として描いている点が個人的にはやや興醒めでした。
当代の気質をリアルに描いていると言えなくも無いとは思いますが、彼には最後まで感情移入する事が出来ず、ラストの地獄流しの依頼も何かとってつけたように浅薄で、「地獄少女らしさ」に欠ける印象でした。もう少し彼に魅力を感じられると良かったのですが…