アニメと少女マンガにて展開している「地獄少女」の小説版。
著者・天羽沙夜氏は、割と以前から、主にコミックやゲーム・アニメ作品等のノベライズを手掛けておられる作家さんで、本書の後書きによるとこれが13冊目の作品だそうです。それなりに経験と実績がおありの方のようで、文章力や表現力、ストーリー構成等は程よいレベルで整っており、非常に読みやすい作品であると言うのが一読後の感想です。
「地獄少女」のノベライズに関しては、ほぼ同時期に本書ともう一冊、全く別の版元から出版されておりますが、この2冊、ノベライズの切り口が全く異なっており、それぞれに特色の異なった小説版「地獄少女」が楽しめます。
一方はアニメ版にもシナリオとして参加されていた方が著者であるが故か、あえてアニメ版とは全く違った描き方でノベライズされているのに対し、本書の著者・天羽氏はあくまでアニメ版(もしくはコミック版)の流れに沿ったノベライズを目指されたようですね。意外性や「鬱」加減等、小説としての読み応えは正直な所、もう一方の作品の方が上に感じられますが、アニメ版、もしくは少女マンガ版の延長線上にある作品としては、本書の方がより基となった『地獄少女』らしい作品となっており、ファンにとってはより違和感無く楽しめるノベライズになっていると思います。
また対象年齢は本書の方が明らかに低いですね。もう一方は露骨ではないものの性描写を含み、キャラ付け等にも大人を対象とした作品と言う雰囲気が強いですが、本書は舞台が中学校で、主体もその中学に通う生徒、閻魔あいもその中学に潜入している設定ですので、どちらかと言うと少女マンガ版に近い雰囲気があります。挿絵の傾向からもそれがうかがえますね。
小説としての読み応えを優先させ、本編との関連が薄れてしまった『恨の紋章』に対し、よりストレートに「地獄少女」の世界をノベライズしたのが本書であると言えますね。