16 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
地獄のオペラ , 2005/12/11
レビュー対象商品: 地獄に堕ちた勇者ども [DVD] (DVD)
とにかく圧倒的に面白い。映画は上流階級の人々の贅沢三昧の暮らしぶりをみせて始まる。だがほどなく分かるそのすさまじいまでの異常さ。女装趣味で、幼児性愛の男あり、その男のこれまた常ならぬ母あり、その母の常ならぬ恋人あり。そして極めつけはその母と息子の関係。目を背けたくなるような異常な人々の異常な生活の断面がこの映画を埋め尽くす。その地獄ぶりは、私の頭にある貧しく、みみっちい地獄よりも何倍も恐ろしく、その描き方は震えがくるほどリアルで美しい。チューリンの最期のシーンの「死に化粧」した顔が1週間くらい夢にでてきて悩まされた。これだけのとんでもない映画にはそうそうお目にかかれないだろう。映画がある意味、常ならぬ物だった時代が懐かしい。
46 人中、35人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
これは毒です, 2004/4/13
レビュー対象商品: 地獄に堕ちた勇者ども [DVD] (DVD)
絶対にビデオで見るべきでない映画というものがありますが、ビスコンティの作品はその最たるものといえるでしょう。特にこの作品のように、舞台劇的な要素の強い(アクションや編集の妙で見せるのでなく、あくまでも演技で勝負する)作品は、その空気に上手く乗り切れないと、観ている方は非常にダレてしまいます。以前ビデオ版を試したことがありましたが,映像が汚くて観ちゃいられませんでした。その点、劇場で観るほどの臨場感は望めないにせよ、DVDでの復活はうれしい限りです。
それにしても毒のある作品ですねえ。もうあまりに毒が強過ぎて、分からない人にはまるで分からないと言う可能性さえあるでしょう。一つの文化の崩壊を描いた作品として、近年"アメリカン・ビュティー”がありましたが、この作品に比べると軽い軽い。何やらただならぬ妖気に満ちあふれた映画です、しかしながら、私は"退廃美”とか、"狂気と倒錯”といった言葉のみに惹かれてこの作品を見た人はむしろその本質を見失うのではないかと危惧してしまいます。
この作品はヨーロッパ文明の崩壊を象徴的に描いた作品ですが、その近代ヨーロッパ文明の礎を築いたルネサンスを強力に推進したプロモーターは、ほかならぬビスコンティ家だったのです。それから約500年後、この家系の末裔、ルキノがその終焉をみとることになろうとはー。彼にとってこの作品を作るということは、"退廃の美"などと言う生易しいものではなく、"痛恨の極み"そのものだったのはないでしょうか。その運命も凄まじいが、それを敢然と受けて立ち、芸術へと昇華してしまう彼のエネルギーもまた凄まじい。まさに刮目して観るべき作品だと思います。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
比類なき圧倒的な美…, 2011/6/5
レビュー対象商品: 地獄に堕ちた勇者ども [DVD] (DVD)
ヴィスコンティの撮る映画は美意識が別格で、出演している俳優達も際立って美しい。
超一級の美は、彼に見出だされされ陽の目をみる運命と言われても必然とさえ思う。
その審美眼は、俳優達から最大限の魅力を引き出し息吹きを与えている。
157分の大作であるこの作品も、モラルや悪趣味、紙一重の芝居がかった舞台を見ているようで
爽やかさとは無縁の生々しい泥沼劇。
なのにむせかえるような硬質の美を保ち、時を経ても色褪せない名画のように印象に残る、奇跡の映画。
ナチスのその後の歴史を知るように、所詮はこの浮き世で弱者が強者になりえたとしても、それは滅びへと向かう序章にすぎない一瞬の輝き。
破壊と背中合わせの不条理。
俳優陣ではアッシェンバッハ大尉役のヘルムート・グリーム。 (美しさの次元が違う俳優) SS親衛隊の軍装が似合う甘美な顔で、操る人々の弱味や憎悪を嘲り笑う姿は、私欲が無いだけに空恐ろしさが倍増するイノセントな死神の横顔。はまり役だ。
誰もが本心ではこの男を信用してないにも関わらず、毒をもって毒を制す、悪魔のような囁きに、醜悪な感情を刈り取られるがごとく自ら身を捧げ破滅へと陥っていくように見える。
美=滅びゆく定めでありエロス=タナトスである。 徹底して全てが滅びるという救いのないこの映画に、人の弱さ儚さを感じて一抹の救いを見る。 フィルムに焼き付けられた極上の比類なき芸術に違いない。
この爛熟した文明の現代にルキノ・ヴィスコンティの美学に触れられて幸せだ。