当書は、行政学叢書(全12巻,東京大学出版会)の1冊であり、基本的には日本の中央や地方の政治・行政構造を探究した学術書・研究書と位置付けられるものであろうが、私は、著者である西尾勝・東大名誉教授(東京市政調査会理事長)の「地方制度改革」に関する自省なども込められた、中間総括的な意味合いの濃い書物として読み終えている。
さらに付け加えると、著者の論ずる「地方分権改革」について、その根底には「政治構造改革と表裏一体の関係にある」(P.267)という認識などが横たわっているのだけれども、著者の地方分権改革に係る様々な営為に関して、総務省関係者の“つまみ食い”や“拡大解釈”、マスコミ等の“曲解”や“無理解”が横行していたことも、これまた事実であろう。
実を言えば、私も西尾氏は小西砂千夫・関学大教授などとともに、「平成の大合併」推進派の急先鋒という印象を持っていた。だが、本書を読んで判ったことだが、「『平成の市町村合併』は(略)政治主導でやみくもに始められたもの」(P.126)であり、明治や昭和の「町村合併」とは異なる“大義なき大合併=無原則な合併促進”を暗に批判もしている。
市町村合併に対する著者のスタンスとしては、第一次分権改革の完了=機関委任事務制度の全面廃止や現在進行中の地方税財源の充実確保などを終えた後、合併に着手しても遅くはない、といったものである。しかしながら、この点、総務省は地方財政効率化を旗印に「いけいけドンドン」であり、著者の意想との乖離、背馳が気になるところではある。
なお、最後に是非とも触れておきたいのは、第27次地方制度調査会(2001~03年)における所謂「西尾私案」(02年)である。この私案は、一部報道のミスリード等も手伝って、特に「特例団体」となりそうな小規模町村の関係者にかなりのショックを与えたものだったが、当書は「西尾私案」の真意と要所も述べられており、その本旨の確認にも最適である。