国際政治学の分野における中川教授の論考が英米系地政学に立脚するものであることは、つとに知られてきた。
その国家安全保障論は、地政学的観点から徹底して親米反露の姿勢を取るものであり、また、その軍備管理論は、「軍事バランスの算定は地理と不可分」であるとの前提を基に一貫して論じてこられたものである。
私はかねてより、中川教授の透徹した分析力と先見性を支える柱である英米系地政学を体系的に講じた著作の出版を待ち望んでいたが、この『地政学の論理』は、その願いを十二分に叶えてくれている。
(1)英米系地政学の泰斗たる二人の碩学(マッキンダー/スパイマン)の理論、(2)その対極に位置するドイツ系地政学との精緻な比較、更には(3)中川教授独自の「核抑止の地政学」までもが明快に講義されている本書は、地政学教科書の決定版と言えるだろう。
なお、本書冒頭には、「マッキンダー地政学は、二十一世紀日本の外交にとって不朽の羅針盤であり、スパイクマン地政学は、二十一世紀日本の国防にとって死活的な海図である」と記されているが、中川教授はその博覧強記を以ってこれを余す所なく論証している。
再膨張する「第一ハートランド(=ロシア)」と、台頭する「第二ハートランド(=中共)」に睨まれた最悪の位置に浮ぶ小船である我が国にとって、本書より得られる「知」は真に不可欠のものである。