アクオスの漆塗りフレームのモデルが発表されたとき、当時、インターネット上で家電小売店を営んでいた私は、
「テレビに新しい風が吹いている」ととてもびっくりしたのを思い出します。
そのアクオスシリーズのデザイナーを、発売当初から現在まで務められている喜多氏の著書。
p158の厚くはない本ですが、喜多氏が1960年代から現在まで、伝統工芸・地場産業とコラボレーションしてきた6つの事例が、
地元の職人さんたちのインタビューも交えながら濃密に語られており、
製品開発の秘話という意味でも、人間の挑戦の記録としても読ませます。
また、表紙を含め、製品をとらえた豊富なカラー・モノクロ写真が1枚1枚非常に美しく、眺めているだけでも楽しいです。
序文「魂をこめるものづくり」の中で、著者は、現代社会の中で地場産業が直面している状況について、
消費者の暮らしの変容、流通構造の問題、グローバル競争等多角的に問題提起しています。
中でも、「全世界がエコロジーに心を向ける今、使うほどに手で磨かれ、色が落ち着き、風合いが出てよい、という日本伝統の物づくりの価値観は、もっと見直されて良いはず」という主張には、日本が世界に発信できる大きな望みを感じました。
別のところで知りましたが、著者は最近、もともと山陰にあった古い日本家屋何棟かをボルドーに移築し、
日本古来のミニマリズムな暮らしの紹介を通じた 美とエコロジーを両立したライフスタイルの提案を行っているそうで、
そちらの活動も興味深いと思いました。