工業の衰退による都市荒廃は先進国共通の現象だが、再生のためのシナリオは2つに分かれる。1つは市場主義に基づく米国型のシナリオ。もう1つは財政によって、人間の生活する「場」としての再生を目指す欧州型のシナリオで、自然環境の再生が優先される。路面電車を敷き、自動車の乗り入れを禁止したフランスのストラスブールなどがその好例で、「人が歩きたくなる」街には高級ブランド店なども進出して活況を呈しているという。
日本は、「民活」の名の下、市場主義に基づく都市再生を志してきた。だが、投資効率の良い大都市のビッグプロジェクトに投資が集中することとなり、地方の空洞化には全く歯止めがかからなかった。日本は欧州の地域社会再生に学び、人間の生活の「場」として機能させることを重視すべきだと著者は説く。地方分権を進め、地方自治体が財政的自己決定権を強めることなど、そのために必要な環境作りにも言及している。
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27 人中、24人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
新自由主義を越える経済のあり方,
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レビュー対象商品: 地域再生の経済学―豊かさを問い直す (中公新書) (新書)
マスコミや、経済雑誌でよくいわれているような新自由主義的な主張(=人々が必死で生きていかざるを得ないように、社会的セーフティネットを取り外して後がない状況にする)に対して、どこか素直に納得できない部分があった。しかし、この本に書かれてあるように社会的セーフティネットをサーカスの綱渡りのセーフティネットと例えれば、そのセーフティネットを取り外すことで演技者は真剣に演じるようになるが、失敗は即、死につながるが故に、リスクの高いアクロバットは演じられなくなるというたとえは、実際の社会においても後ろ向きで冒険することをおそれがちな現在の状況をうまく表していると素直に納得させられる。確かに、失敗ができない社会であるならば人々は消費を控え、貯金をし、そしてリターンも大きいがリスクも大きいような職を選ぶことはしなくなるだろう。 現在、セーフティネットと呼ばれているものはかつては家族、あるいは地域コミュニティによって提供され、第二次大戦以降を中心に国家によって供給されるようになったものだが、産業革命以降の大量生産、大量消費型の工業経済、ひいては市場経済によってコミュニティが破壊され、その替わりであった国家もまた最適な供給ができなくなってしまった現在、この役割は地方自治体が担わなくてはならないと思う。もちろん、福祉・医療・教育などのに代表される対人社会サービスなどで、直接的に供給することも大切であると考えられるが、それとともに住民自らが自らの街のために主体的に行動することをバックアップするような行政も必要であると考える。この点についても新自由主義とは異なり、そこに生きる人間を重視した社会システムのあり方を提示している本書は現在の社会のあり方に疑問をもち新たなシステムのあり方を求めている人には大変参考になると思う。
17 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
総合的な分析に秀でる、後半の議論は具体に欠ける,
By さっしー (東京都江戸川区瑞江) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 地域再生の経済学―豊かさを問い直す (中公新書) (新書)
第2章までは経済学というより、産業史・都市論・マルクス経済学などを総合した理論的形成ですが、非常に優れていると思いました。現在を工業都市から情報都市への移行段階、エポックメイキングな状態と説明し、 都市を歴史的形成過程から振り返ることで変化の必然性を述べ、地域再生への道を示していく過程は非常に わかりやすく、多面的です。また、ここで挙げられた地域再生の成功例、ストラスブールは理想的すぎて 第三章以降、徐々に財政学的な分析に入ります。第五章までは処々の理論を引用しながら、政治システムの変容と 地方共同体の役割について論じ、セーフティネットを取り払うアングロアメリカ型政策を採り地方空洞化を 少し紹介してくれてもよかったかな、と。 6章が地域再生に向けた所得生産・分配・消費の三局面で課税し、また財政格差是正を地方自治体間の協力によって また、地方税率の高い自治体に交付税を高く配分、という抽象論の具体が見えず、納得し切れませんでした。 最終章では教育などの地域社会の形成、公共財について述べて終わりますが、ストラスブール再登場後、やっと日本での 日本の事例はもっと欲しいし、農業の崩壊や文化の相対的画一性など、ヨーロッパと事情が違うので、
16 人中、12人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
後半がちょっと・・・。,
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レビュー対象商品: 地域再生の経済学―豊かさを問い直す (中公新書) (新書)
~うーん。前半は期待して読んだのだが、経済学という割りには後半の処方箋との脈絡がどうも飛躍していないか、と思う。円高による国内生産コストの高騰から、多くの労働集約型産業が他国へフライトし、地方の産業は公共事業への依存度が高まった、というあたりはまあ、だいたいその通りだろう。フルセットの中央集権から地方に財源を委譲し地方分権を高めるべ~~き、というのもわかる(ただ、これって全然新しくは、ない)。一方地方分権の要である税源委譲の問題は、財政学の専門家であり、理念と方法論の解説はかなり参考になる(ただ、自主財源の格差是正のための交付税改革を地方自治体間の自発的協力に求めるのもどうかと思う。都道府県を指しているのかそれとも・・・?)。 ~~ そして、地域再生には二つのシナリオ、一つは工業誘致ともう一つは「本来の」地域再生のどちらかだという。当然筆者は後者を勧める。 ~~ 問題はその後だ。現代は知識社会だということが自明のように語られ「知識を移動させれば、技術移転によってモノそのものの移動は抑制される」「情報を動かせば、ヒトの移動も抑制される」って、それ本当?筆者のいう知識社会では人間が重要になり、余暇時間も増えるのだから、むしろ交流のためヒトの移動は頻繁になるのでは?自給率の低い日本でどうやってモ~~ノを移動させないで食べ物を調達するの?環境に優しいエネルギーのために必要な技術は地域だけでまかなえるの?という疑問が噴出する。国内事例の紹介も趣旨とあっていない部分もあり、少し散漫だ。~
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