この作品は当時タブーだった『部落問題』が描かれていたから、文学賞を逃した
そのようなあとがきを読んで、へぇっ?と思ったものである。
触れてはいけない問題というより、
かつて、あまり人の手の入っていない山間部などに確実に存在したであろう、
そして、現在も、根底には残っている土地柄もあるだろう
「閉鎖感」をエンターティナーにした作品だと、思ったからだ。
面白い、本当に面白いミステリー。
アリバイとかトリックとか真犯人とか
そういうありきたりの単語が不要なミステリー。
人里離れた旧家や本家や、奥座敷や勝手口、旦那様や奥様や下働き、
そんな単語が普通に存在する自分の故郷を、
町の学校に行って客観的に物事を見る目が養われた主人公が
「おかしいな、おかしいな」と
始めは何の気なしだが、
少しずつ、村の(それこそ)タブーに近づいていく。
中盤、主人公の『知りたい』と思う気持ちと、
『知ること』が平凡な毎日の崩壊につながっていく恐怖が
せめぎあい、
ラストでは、主人公の驚きを共有できるので、とても複雑な気分になる。
他の著作も本当に独特で
読後にカタルシスが味わえる、
稀有なストーリーを生み出す素晴らしい作家だと思う。
今はほとんど手に入らないようですが、
どこかで再販してはもらえないでしょうか。