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地下鉄に乗ることを楽しみにパリへ出てきた少女ザジが主人公。
しかし地下鉄はスト中で利用できず、そこからザジの、決して目的に辿り着かない物語が始まる。
女装バーで働く叔父さん、美しいその妻(?)、複数のアイデンティティーを往還する怪人など、絢爛な登場人物は荒唐無稽に見えながらも、パリそのもののエッセンスを味わわせてくれるかのようだ。
だがページが進むにつれてそれらの登場人物や作品世界は、徐々にほころびはじめ、脆さと美しさとを見せる。
このほころびの拡大こそがこの作品のだいご味だ。
クライマックスもストーリーの進展によってではなく、これらの奔放さ、絢爛さ、脆さが極限に達することで生み出される。
後に残るのは、エンディングとも言えないエンディング(オチはついている)と崩壊感と、何よりも「あー、楽しかった」という感覚。
子供の頃、思いきり遊んだ後で感じた疲労と気持ちよさだ。
この作品に教訓はない。
だが、快楽ならたっぷりある。
これは全然普通の文学じゃありません、「あとがき」にもあるように、シュルレアリスムと実存主義の板ばさみで疲れ果てていた当時のフランスの読書会に鶴の一声のような革命をもたらした一冊なのだそうで、なるほど確かにこれは難解な物への果てしない皮肉を感じさせます。それでいて、素人くささや、質の低さを感じさせずに、やっぱり文学として高次元で成立していることは素人目にも一見。そこがスゴイと思いました。
まるでアンディ・ウォーホルがどこまで難解になれるかを競っていた美術界に漫画みたいなキャンメル缶の絵を持ち込んだ時のようなスゴ味を感じさせます。こりゃ映画のほうも見ないわけにはいきません(監督は「死刑台のエレベーター」で有名なルイ・マン氏だそうです)。
中公文庫、生田耕作、アンタらエライで。
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