内容紹介
地元の音楽家や聴衆とふれあう日常がユーモラスに綴られるなか、2005年7月には「地下鉄同時爆破テロ」に遭遇。
メディア報道では見えなかった事件前後の生のロンドンが克明に描かれる。
UKロックなどのメジャーとは違うもう一つの英国音楽シーン、そこに生きる人々とバスキングという音楽文化を紹介する魂の一冊!
【目次】
Chapter1
バスカーの聖地
Chapter2
ロンドン地下鉄同時爆破テロ
Chapter3
WE ARE THE CHAMPIONS!!
Chapter4
魂のバスキング
内容(「BOOK」データベースより)
内容(「MARC」データベースより)
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ギタリスト。推定500人以上といわれるロンドン地下鉄バスカーのひとり。バブルガムブラザーズのバックバンド・ギタリストなど日本のメジャー音楽シーンで活動後、「ビートルズやU2が育った国で音楽をやりたい」という一心で、英語もままならぬまま渡英。ロンドンが発行する地下鉄のバスキング・ライセンスを、日本人で初めて取得した。公認バスカーとして、すべての生活費をバスキングで稼ぎながら音楽活動を敢行、今にいたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
産経新聞【旬を読む】「心に擦過傷」を負う 演芸研究家・大友浩 2006/12/16
彼はバブルガムブラザーズのバックバンドをつとめたこともあるギタリストだが、単身ロンドンへ渡り、少なくとも3年以上のあいだ、地下鉄 バスカーとしての生活をおくった。ほかに職業をもたず、純粋にバスキングだけで生活していたという。
1日の記録の最後には、「本日の稼ぎ 37ポンド」などとその日のもうけが記されている。
ロンドンの地下鉄では、一定のライセンスをもった者が、決まった時間に、決まった場所で演奏をして、金を稼ぐことができるシステムになっている。つまり、行き交う人々が彼の聴衆であり顧客なのである。
そこには当然、多くの人々との出会いがある。客やバスカー仲間や駅員など、彼の「ステージ」を訪れる人間は実にさまざま。中にはそうとうユニークな人間も含まれている。そうした色とりどりの人間模様を、著者は淡々とつづっている。
写真家の森山大道は、自身と風景とのかかわり方を「擦過する」という言葉で呼んだことがあるが、土門の他人とのかかわり方も、まさに「擦過する」という言葉がふさわしいように思われる。
親子や兄弟のように長い時間をかけて積み上げていくようなかかわり方ではない。二度と出会わないかもしれない人との、極めて短い時間でのかかわり方である。
深いか浅いかといえば浅いけれども、時としてその中に、人間らしい温かさや、生きることの哀しさ、やるせなさが浮かび上がる。
7月7日には、ロンドンの地下鉄で同時爆発テロが起きた。日本でも大きく報道された。
翌日、あるバスカーの足下には「今日はチップは受け取らない。みんなのために歌うよ」と書かれた紙が置かれていたそうだ。土門もこの貼り紙を引き継いだ。
ある日、乳母車の赤ん坊のために「魂の演奏」(この言い方は著者の口癖のようになっている)をしたら、母親はとても喜んでくれた。別れ際に乳母車の中を見た。土門は、青い目の赤ん坊が人間でなく、人形だったことに気づいた。
はたしてこの親子(あえて親子といおう)のその後が気にならない読者がいるだろうか? 土門は、その後もこの親子と会っていない。
読者の心も擦過傷を負う。=敬称略
『地下鉄のギタリスト』(土門秀明著 水曜社・1470円)
【プロフィール】大友浩
おおとも・ひろし 昭和33年東京・深川生まれ。落語CDワザオギ プロデューサー
著書に『花は志ん朝』『噺家いきつけの安くて旨い乙な店』。共著に『落語の世界』
『えんぜる 夢丸新江戸噺』など。++ +++