浅田次郎さんは,JALの月刊機内誌にエッセイを書いているが,文章がうまくてすごく面白い。
それで,浅田氏の小説を読んでみようと思い,手始めに軽いタイトルのこの本を手に取った。
文章のうまさはさすがであり,
主人公がタイムスリップした先の戦争中や終戦直後のゴタゴタを
見てきたように生き生きと描き出す。
地下鉄構内に入ると時空がねじれてタイムスリップしてしまうのだが,
時間を超えることは小説の中の道具立てに過ぎず,
SFそれ自体がテーマではないので,仕組みや理屈などどうでもよいことである。
厳しい終戦を乗り越えて生きる「アムール」のしたたかさはとても魅力的であり,
主人公とともにタイムスリップし,それぞれの時代の「アムール」を見ながら,
また,他の登場人物の他の時代の姿を見ながら,
人の人生というのは,今ある姿だけでは推し量れないほど色々な側面があるんだな,
と改めて感慨深く思った。
サイドストーリー的にこの小説を彩る「みち子」の存在はあまりに哀しくはかないが,
これもまた,人生ってなんなんだろうと
本を閉じて考えたくなるようであった。
要するに,全然,軽い小説ではなかったが,浅田次郎氏の小説家としての魅力を
知るところとなった。
次はまた氏の別の小説を読んでみよう。