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「……この絶望は、人世を憎悪しつつ自己自身であろうと欲するのであり、自分の惨めさのままに自己自身であろうと欲するのである。
この絶望は、反抗して、あるいは反抗的に、自己自身であろうと欲するのでもなく、反抗のために自己自身であろうと欲するのである、それは自分の自己を、それを措定した力から反抗して引き離そうと欲するのでもない、それは反抗のためにその力に迫り、その力に挑戦し、悪意をもってその力にしがみついていようと欲するのである……それだから、彼は自己自身であろうと欲し、自分の苦悩をひっさげて全人世に抗議するために、苦悩に苦しむ自己自身であろうと欲するのである。」
(『死に至る病』第一編最後の2頁より)
この小説は、ただの負け犬の言い分を描いたものなどではない。ここには神学論議にすら発展しうるだけの深刻な問題をも含んでいる。主人公はそもそも、いわゆる世間的な「成功」といった価値を信じることができない人間なのだから、「負け」も「失敗」もない。いみじくもキルケゴールが言ったように、「反抗」以外に何も持たない人間なのだ…。
…このように書くとこの小説のことをムズカシク感じてしまうかもしれないが、そう気構えて読む必要はまったくない。ドストエフスキーは芸術家としてもやはり超一流なので、まずはこの作品をどっぷりと味わって欲しい。前半部の、五十頁にわたって綴られている主人公の独白は、人によってはやや退屈に感じるかもしれない(だが内容は興味深い)が、後半部の回想話におけるドストエフスキーの筆致は凄まじく、私は初めて読み終えたとき、この迫力ゆえにただただ呆然としてしまった。ぜひぜひ一読を薦めたい。
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