『土』の中に出て来る人物は、最も貧しい百姓である。
教育もなければ品格もなければ、ただ土の上に生み付けられて、土と共に成長した蛆同様に憐れな百姓の生活である。
と、その序で夏目漱石は言いました。
そして「娘に読ませたい」と言ったことでも有名です。
『土』はある家族の数年間の生活を描いた作品です。
とても貧しく、生きることで精一杯であり、土を踏まない日なんかない、というくらい働いています。
そこにははっとするような出来事も何もなく、ただただ生活のことが描かれているばかりです。
それでもその描写は実に詳らかで、四季の移り変わりの表現なんかは川端康成にも負けないんじゃないかなんて思ったりもします。
ただとても難しい本です。
現代の私達では想像もできない色々なものが出てくるし、登場人物の喋り方は方言なのでとてもわかりにくいし、読みづらい。
それでも明治43年(1910)に何故、当時のトップメディアであった朝日新聞に連載されたのか、と考えると読まずにはいられないものでした。